あらいくまたんです。
中1ピヨ子の通う公立中高一貫校では、国語の時間に毎回、自分のオススメ本を3分で紹介するブックトークがあります。
先日またピヨ子のブックトークが終わったようで、また原稿を公開しても良いと言われたので、掲載してみます。
『未来のサイズ』ブックトーク
「制服は 未来のサイズ 入学の どの子もどの子も 未来着ている」
今回私が紹介するのは、歌人の俵万智さんの歌集、『未来のサイズ』です。
この本は大きく三つの部分に分かれていて、
Ⅰ 2020年の、主にコロナについて詠んだ短歌
Ⅱ 2013年〜2016年の、筆者が石垣島で子育てをしていた時の短歌
Ⅲ 2016年〜2019年の、筆者が宮崎に宮崎に移り住み、息子が学校の寮で生活するようになった時期の短歌
をそれぞれ集めたものになっています。
量としてはⅢが一番多いんですが、一昔前のことで共感できる社会問題が少ないこともあり、個人的にはⅠの部分が一番面白く感じました。
この歌集は、短歌が好きではない人にこそ、読んでその魅力がわかるものだと思います。
短歌と聞いて、言葉が難しくて内容が理解しづらい、堅苦しいものと想像する人も多いと思います。
しかし、俵万智さんの短歌は、まるで普通の文章のようにスラスラと読むことができ、さらにそこにユーモアがある、というのが大きな特徴です。
例えば、
「コンビニの 店員さんの 友達の 上司の息子の 塾の先生」
こんなに遠い人に会ったよ、ということですね。
ここに入っている418首の短歌の中で特に好きな32首を厳選してきたんですけど、これはその中でも特に、俵万智さんだからこそ作れた短歌だと思いました。
他にも、
「つむじという 語を知らぬ子の 解答の 『おへそを曲げる』 悪くはあらず」
とか、
「昼食の カレーうどんを すすりつつ 『晩メシ何?』と 聞く高校生」
など、
何気ない日常の中でふと思ったことを、ひねりすぎずストレートに言い過ぎずという絶妙な言葉選びで詠まれた短歌がギュッと詰まっているのがこの歌集です。
短歌にあまり興味がない人に勧める理由は他にもあります。
どんなに素晴らしい短歌でも、人によって共感できるかどうかは違いますよね。
私も読んでいて、何が言いたいのかよくわからないなと思うものもいくつかありました。
しかしこの本、最初から最後まで全て読まなければいけないわけではありません。
短歌を見開き1ページに6首ずつ、418首載せただけの歌集です。
どんなに短歌が嫌いな人でも、面白いと思うものだけ拾って読み、苦手だと思うものは飛ばしていくことができるんです。
これなら、嫌な思いをせず読み続けることができますよね。
何気ない日常の中で見つけた小さな驚きや、しみじみとした気持ちなどを、ユーモアのある言葉で綴ったこの歌集、ぜひ一度手にとって開いてみてください。
この本、装丁が独特ですよね。
白地に黒で文字しか書いていない本、初めて見ました。