あらいくまたんです
この続きです
①
②
③
④
前回の鉄くんの発狂後
初めて長い長い独白があり
「なんで生きてなきゃいけないの？」
に答えることとなった
「なんで生きてなきゃいけないか
それは
お母さんが
鉄くんに生きていて欲しいからだよ
学校行ってもストレスしかないなら
もう行かなくていいよ
家にいても勉強ばっかと言うなら
もう勉強は辞めよう
何にもしなくていいよ
お金も心配いらない
何でも好きなことをしよう
お母さんは
鉄くんが生きていてくれれば
それだけでいい
だから
死んじゃだめ
だから
鉄くんがもう死ぬのは辞めたって
言うまで
絶対離さない」
それでも鉄くんは
「お母さんの思いなんて
知らないよ
鉄くんが生きてなきゃいけない理由には
ならないよ
鉄くんには
関係ないよ」
なかなかやりおる
「そこまで言うなら
確かにその通り
お母さんにはそれ以上言う権利はない
鉄くんの人生だからね
自分で決めるしかない
でもね
鉄くんは
今死んだら
全てがなくなって
楽になれると
思っているみたいだけど
そうじゃないっていう考え方が
主流なんだよ
自分で自分の命を
終わらせると
もっともっと
辛く苦しい世界に
連れていかれちゃうかもしれないよ？
ちょうど今
寝る前に読み聞かせしている
『カラフル』 森絵都 著
は
そういう話だよ
今最後まで読む？
それとも
何故生きているかっていうのは
『哲学』っていう大きな学問の一つで
ここでさらっと答えられるほど
単純な話じゃないの
家にはそれを簡単にまとめた
『ソフィーの世界』っていう
分厚い本もあるよ
そっちも一緒に読む？
あとさ
鉄くんは
今
勉強とか学校とか家とか
全部ストレスだらけっていうけど
世界には
家も学校も勉強も
当たり前に無い
欲しくても手に入らない
そういう地域もたっくさんあるよ
今日生きていけるかもわからない
欲しくても毎日食べ物がないかもしれない
水も手に入らないかもしれない
そんな中
毎日爆弾に怯えて逃げ回らなきゃならない
そんな世界にいる子供が
たっくさんいるんだよ
鉄くんは
何にもやりたくなければ
何にもやらなくても
ただ生きていくことはできる
そのために必要なお金は
親が用意できる
何にも心配いらない
もちろん
いつかは
お母さんもお父さんも
鉄くんのそばにはいられなくなる
その時に困らないように
今勉強して
より良い環境で生きられるように
なって欲しいとは思ってきたけど
今この瞬間の鉄くんが
生きていく以上に大切なことは
お母さんにはない
だから仕事も辞めたんだよ
だから
今死ぬのは
辞めて欲しい
これはお母さんからのお願いであって
鉄くんがそれでも嫌なら
仕方ないかもしれない
でも
お母さんが見ている前で
死ぬことは
許さない
だから
死ぬの辞めたって言うまで
離さないよ
そしてね
鉄くん
我が家のベランダから
飛び降りれば
死ねると思ってるみたいだけど
4階だと確実じゃないし
下は芝生だし
植木もあるし
大怪我だけして
助かっちゃうかもしれないよ？
そしたら
痛みとか苦しみは
もっと増えて
生きていくことになっちゃうよ
それでさ
そろそろピヨ子が帰ってくるから
お昼ごはんの準備
始めたいんだけど
鉄くんお料理するの？しないの？」
「、、、、する。」
「じゃあ、手洗ってきて」
「食べたあとこれ終わったら
机組み立て
手伝っていい？」
とさっき投げ出した分の
勉強を指差す
「ん？もう勉強はやめたんじゃないの？」
「やるよ」
「そう。いいよ。
終わったら一緒に机組み立てよう。
その前に、さっき投げて散らばった部品
足りないんだけど。探して？」
ちょうどピヨ子が帰ってきて
探してくれ
どうしても見つからなかった2個が
シンクのコップの中と
リンゴの袋の中から見つかった
続きます
